電話:03-6661-7386
プロフェッショナルの現場 Vol.8
プロが選ぶプロテクター
プロフェッショナルの現場 Vol.8
りおん薬局 株式会社FINE
代表取締役 薬剤師
平井 文朗
セブンパークアリオ柏店 管理薬剤師
鎌田 裕之
2017年板橋区で開業した“りおん薬局”。
外来処方箋の受付だけではなく、在宅訪問、施設訪問も行う。
単に薬を売るのではなく、薬を通じて対話し、一人一人の健康に寄り添う。
板橋の本店につづき、千葉県柏市にあるショッピングモール「セブンパークアリオ柏」にも出店。
ともに地域に密着した健康サポーターとして、地域住民にとってはかけがえのない存在となっている。
ー 平井さんのプロフィールを教えてください。
(平井)大学の薬学部を卒業したのち、製薬会社の営業を経験。家族に健康被害が出ていて、当時その薬が何を使っているかわからず不安だったことがきっかけで、ある先生方からの後押しをもらって2008年に薬剤師になりました。病院薬剤師ではなく、在宅医療専門の薬剤師になりたくて、薬局業界に入りました。
在宅医療の薬剤師が何をするのかと手探りの中で、教えてもらっていたのは医師、看護師、患者さんです。この薬がどういうふうにして患者さんに影響を及ぼしていくのかっていうのを見させてもらって。
「ただ薬を渡して終わり」という薬局薬剤師に元々違和感しかなかったので、お薬という目に見えるものをお渡しするところから、その人の人生が健康になっていくという目に見えない健康をお渡しするところまでやりたいと考えていました。
そこを突き詰めた時に、勤め人だと会社の経営と自分のやりたいことが真反対になってしまい、行動を制限されることが非常に多かったのです。いつか自分のやりたいように、責任を持ってと考えた時、独立開業という道を選びました。
ー 鎌田さんのプロフィールはいかがでしょう。
(鎌田)もともと漠然と医療従事者になりたくて、高校も医療クラスがあるところを選びました。
リハビリ系の理学療法士とかいいなと思って入ったのですが、実際現場を見させてもらった時に向いてないな、自分に合ってないなと思いました。
考えた結果、医療人にはなりたいけど何ならいいかなと思った時に、薬剤師は自分に合っているなという考えを持って入りました。
ー お二人とも自分がやりたいこと、本望を大切にして働いているから、いい顔をしてイキイキと働いているんですね。
薬という物を売るのではなく、薬を通じて健康そのものやその先の人生も届けていますね。
(平井)「その薬を自分の家族に渡すとしたらどうだ? 例えば投げたりとか、適当にしたりとか、面倒くさいとか。そう言う扱いをされた薬を自分の家族がもらって嬉しいかどうか』って職員に話します。
ただ渡すだけなら私たちなんていらないのです。
全国に薬局はたくさんありますし、どこでもらっても薬は一緒です。では、何が変わるのといったら情報だと思っています。その情報も一方的に渡すのでなくて、いかに相手の立場に立って言葉を変えていくというのが私たち薬剤師だと思います。
情報の伝え方。
医師は医師にしかできない責任があります。私たちは、医療の最後を扱う立場なので、その人に合った言葉で変換するブラックボックスが大事だと思います。
ー その伝え方ですが、もちろん、どう伝えるかも大事ですが、何を伝えるかがもっと大事ですよね。
単に説明するのではなく、共に考えて、今やるべきことを共有するナラティブ(物語性)のような。
(平井)ナラティブで人生を確認して対話することは、いつも意識しています。
薬を渡さなければいけないという仕事はありますが、同時に「その方がどういう人生を歩んで、ご家族はどうなのか。どういう物語で人生を歩んでいるか。」と考え、それに寄り添えることは何かと行動する。
お話をしていく中で、「この人こういう感じなんだろうな」というやりとりが出来るようになると、受け取る側が変わってきます。
それが私は得意だと思っています。
そうでないと、やってられないのです。
この思いに賛同してくれているのがこの鎌田です。
彼は話すことがものすごく上手なんです。
結果として、対話を求める人たちが自然と集まってくれているので、自分一人で限界を感じていたことが出来るようになってきています。
ー お薬が必要な時って、弱っている時が多いですよね。そこに寄り添ってくれている人がいる。
(平井)そうですね。そこをしっかり理解して、どれだけ提供できるかっていうところがとても大事ですね。
私たちは、薬を1分で渡しても30分お話しして渡しても、もらえる金額は同じです。でも、患者さん側からすれば全然違います。
その人に必要なものを提供するべきだと。
ー りおん薬局の特徴を教えてください。
(平井)まず板橋の本店の話をしましょう。
地域密着型で、先生の処方箋を受ける部分は通常の薬局と同じですが、目の前の先生のものだけではなくて、地域もしくは在宅医療を踏まえた上で、無菌調剤、さらには医療用の麻薬であったり、通常のカウンター越しにお薬を渡すその先のことをやっています。
薬局に来られなくなった人にもお薬を届けさせてもらいます。
「ゆりかごから墓場まで」ではなく、「ゆりかご前から墓場後まで」。
つまり、妊娠している時から、子供から成人しておじいちゃんになって亡くなった後、ご葬儀があってご家族が最後見送るまでです。普通、薬局では歩けなくなって来られなくなったら終わりです。
でも、私は、その先も気になってしまう。
全部できる、トータル的に。それがうちの薬局です。医療資格を持っているものに気軽にアクセスできる場所は、薬局しかないと私思っています。
病院は気軽に訪れて、「先生ちょっと気になることあるんですけど」って言えるかどうか。
病院ではなかなかできないですよね。
薬局の薬剤師はガラガラって扉を開けて、「おじいちゃん元気、ちょっと聞きたいことあるんやけど」って対応できて、日常会話を大切にして、その中からこの人にこれから必要になってくるであろう健康のアドバイスを何かひとつ提供できるんじゃないかと思うのです。
日常会話を大切にしている薬局でいること、ゆりかご前から墓場後までを考えているのが私たちの薬局です。
ー アリオ柏店の特徴はどうでしょう。
(鎌田)ショッピングモールの中なので、年齢層は若いです。
しかし、若い人ってそんなに薬局に来ません。風邪をひいたとか、歯を抜いたとか、その程度なので痛み止めをちょっと出して終わりという場合が多いです。
そこで終わらせずに、ウチに来るメリットって何だろうと考えます。
何度も通ってくれる、要は相談しやすい環境にしておく。
薬局に来ないからって、何も困っていることはないわけではないのです。
肩こりとか頭痛とか症状はあるけど相談するほどではないし、痛み止め飲めば治るからというような人とお話して。
話して治してあげるってところまでいけたらいいなというのがここの着地点です。若い方が年齢を重ねた時にも相談しやすい薬局になっているというのが理想です。
ー ところで、そんな方々に選んでただいたプロテクター。決め手はなんですか。
(平井)展示会で見つけたのです。展示会に行くのが好きなんです。いろんなメーカーさんが自信があるものを出しているんだから、私は、それを見たい。
そういうところに常にアンテナを張らないといけないと思っています。
別にアルコールだけを見にいったわけではないですし、雑貨もファッションも見にいきます。なんでも見にきます。
薬局だから薬のことをやっていればいい、薬局だから健康食品のことをやっていればいいでは変化がないと思います。
変化のないものは腐っていくだけ。成長できないと思うのですよね。
アルコールに関しては、自分で触ってみないと納得がいかなかったのです。自分で体験して感動しないと意味がないです。感触とか匂いとかいろいろ気にします。
その中で一番サラッとしていて、見た目で良かった。
ー 割とジェルを嫌がる人も多いですよね。でも、あえてジェルを選んでいる。
(鎌田)そこは話し合いました。ジェルを置いているお店ってあまりないので、不安でしたが、まず自分でやってみるでいいのかなと。ここはお子様を連れている人が多いので、飛び散って目に入ったりしないかとか、ジェルの量であったり、速乾性というか使った後のベタつきはないかとか。
それが問題なかったのです。
スタンドタイプで見た目もきれいですし。これに関して、文句言われたりしたことは今まで一度もないです。
ー こういう場ですから、従業員の方々にもアルコールを使うことも徹底されていましたか。
(平井)当然、コロナ患者の方も来ます。
最初の頃は、板橋の方でもコロナ患者の方がたくさんいましたし、保健所の指示通りやらなければならないことも多くあり大変でした。
感染率も高く1日で40人くらいいらっしゃって、そんな中で、アルコールを強制するとかいうレベルではなかったですね。
自分たちが自分の身を守らないといけない状況でしたし、
その上でいらっしゃった方一人一人に最適な安心を与えるわけです。
ー 現場で考え、現場で行動する姿勢ですね。
(鎌田)私たちは元々大手の薬局に勤めてたっていうのもあるのですが、現場にこそ最新のものがたくさんあるのです。最前線で頑張っていますから、生の情報が大事です。
実際にニュースやインターネット、教科書で出てくる情報も大事ですが、目の前の方の情報が一番です。
それらをかけあわせて、その先を考えて見ていかないと間に合わないです。
ー お二人の話や動き方を見ていると、他の薬局と立ち位置が違いますね。
物理的なことだけではなく、気持ちも。
普通、カウンター越しに向き合うのでしょうが、お二人は横に立って、
患者の方々と同じ方向を見ていますね。
そこで、考えを共有する対話をしているように思えます。
(平井)薬局って一方通行しかないんですけど、答え合わせなんですよ。お薬が出たものに対して「これはこう、これはこう」って言う人があまりに多いんです。
それじゃ当たり前ですし、今はスマホで何でも調べられる。
その方がどんな人なのか分かると、伝えるべきことは変わらないけど、その人によって伝え方が違います。
これが私たちの声なんですと言う話は向きが違うと伝わらない。
だからこそ、その人にむけてどう伝えるかを考えて伝える。
そこは、私たちは、長けていると思います。
多分、医療者の中でもその点に長けているのが、本当の薬剤師だと思います。
ー 生活者側から考えると、ただ処方箋を持っていって薬をだしてもらうのであれば、どこでもいいです。
近いから選ぶというようなコンビニ選びと同じになってしまいます。
それじゃ、そのうち機械になりますよね。
(平井)機械になっていいと思います。間違いもないでしょうし。
これから何でも機械になってくると思いますが、人にしか出来ないことってたくさんあると思うのです。
コンビニでも感じがよければ少し遠くてもまた行くように、例えば「お久しぶりです」って言うだけでも全然違いますよね。
最近、薬だってスマホで調べてから来る人はたくさんいます。
AにはBという効果がある、薬がわかった状態で来る、それで満足するならそれでいいです。
僕たちの頭の中ではABCという薬があって、それを飲むことによってあなたの生活がどう変わるのか、それを分析していくのが薬剤師だと思っています。
まだまだAIのパソコンやネットの情報には負けない、負けてはいけないのです。
ー 人にしかできない、心のある伝え方が大事ですね。
この人は、この処方箋通りに渡すだけではダメだという場面はありますよね。
(鎌田)私はその人にとって大事だと思うことはきちんと言います。
その人にとって一番大事なことは何かはわかっていると思っています。
その人のためになるのなら大事なことは言います。
最終的には友達になればいいと思っています。
向こうも友達と思ってくれたら、話も聞いてくれるし、相談もしてくれるし。
その距離感は初回の時からどんどん変わります。
いきなりフレンドリーでくる人もいれば、全然話を聞く気がない人もいる。そこはもう人に合わせるっていうことが必要です。
(平井)会話をしながら判断する、さらに会話をしていない時間にも判断して。
待ってる時の様子とか。相手によって話すスピードを変えたりとか。口調を変えたりとか。あえてフランクに喋ったり、タメ口とか。
ー あえて、タメ口の方がいいという場合はありますよね。
(鎌田)はい。昔ながらのおじいちゃんとかは、タメ口の方が喜んでいただけます。
それも楽しみながら。
(平井)私たちが楽しんで笑顔になっていかないと、患者さんが笑顔にならない。笑顔になりたいから薬を飲む人がほとんどだと思います。私たちが楽しまないと、私たちも続かないので。
ー プロフェッショナルって何だと思いますか。
(平井)苦労、勉強、辛いこともありますが、その先に楽しいことを知っています。
難しいことをするのですが、側から見たら簡単に見える。
「そんなの誰でもできる」と思われるように見えること。
「日常会話をして薬渡しているだけでしょ」と言われるくらいがプロだと思う。
簡単に見えること。でもそこに来るまでは、ありとあらゆるものを経験して、難しいことを言われた時の引き出しはいっぱいある。それは、必要としていれば出すし、いらないならしまっておきます。
その何気ない会話の中で、場合によっては僕よりこっちの方がいいとか、会話の中からその人の求めているものを引き出したりとか。それが薬剤師たちのプロフェッショナルかなと思います。
(鎌田)プロですか。
それは自分じゃ気づけないことだと思います。
そもそも、自分はプロフェッショナルではないと思っているんです。
別に特別なことはしてないし、他の薬剤師に比べて熱心かと言われればそうでもないし。
でも、喋ったりすることに関しては得意だし、そこには自信を持っているんですけど。
最後薬剤師を辞めるときに「あの人はプロだった」と周りがそう言ってたら、そうなんじゃないかなと思います。
ー まるで正反対のことを言っているようで、かなり似た意見ですね。
(平井)私と鎌田って似ているようで全然違う。私はプロじゃないとやってけないくらい・・・・
プロじゃないんですかと聞かれて、いやあ僕は「そんなに」って言ってると立場的によくない。
役職、環境は人を育てると思っていて、そこで学ばせてもらったこともあるし、絶対折れてはいけないということもあります。
でも、違うからこそ一緒にやっていける。
私は彼から学ばせてもらうことはたくさんあるし、逆に私からもっともっと学んでもらいたいと思うし。
働く場所で好きなことやりたいから。そういえばウチに来てくれた時の条件が「好きなことをしたい」だったね。薬剤師として好きなことをする。
(鎌田)最初に立ち上げた時は、とにかく喋る役をしたかったんで。
好きなだけ喋って、2時間とか、一人で。
喋ってグッタリして声枯れて帰るみたいなこともありました。
でも、それがつながって、さらにつながって、家族を連れてきてくれたとか。
(平井)私から見たら、プロフェッショナル。自分から見たらプロじゃなくても。
その姿勢もプロフェッショナルだと思いますけどね。